毒キノコ
かつては食用菌とされていたが近年有毒が指摘されるスギヒラタケ
さまざまなキノコが食用となる一方で、毒キノコも数多く存在する。致命的な毒を持つドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、フクロツルタケ、ニセクロハツ、ドクヤマドリ、カエンタケなどから、中程度の毒を持ち神経系に異常をきたすテングタケ、ベニテングタケ、オオワライタケや、胃腸系に障害をきたすカキシメジ、イッポンシメジなどが知られている。毒キノコの毒の成分にはアマトキ親類、ムスカリン、イボテン酸、コプリン、イルジンなどがある。
毒キノコによる中毒の症状は様々である。摂取すると、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、昏睡、幻覚などの症状を生じ、最悪の場合死に至る。長期にわたる体の麻痺を生じるようなキノコもある。変わったところでは、アルコールと一緒に食べると中毒を引き起こすものもある。
毒キノコの中には食用キノコと非常によく似たものがある。また、いくら毒性が弱くても体調によっては深刻な症状となることもある(ツキヨタケのような比較的弱い毒キノコでも中毒死した例はある)。自然界には毒性の不明なキノコが多数存在し、さらに、一般には毒性がないとされる種であっても生育地域によっては毒性を持つ可能性がある。スギヒラタケは従来食用とされていたが、2004年に突如食中毒例が報告された。
キノコの同定の経験に乏しい人が野生のキノコを食べるのは非常に危険である。食用キノコか否かを簡単な基準で見分ける方法は(実際に食べてみるというのを除けば)知られていない。また、無毒とされてきたきのこが変異または環境の変化などにより毒をもつ例もある。
エノキタケの廃培地からも発生するコレラタケは「食用キノコを収穫した後に生えるから大丈夫」と誤解され、食中毒を起こす可能性が高い。
見分け方
毒キノコの確実な見分け方は存在しない。
毒キノコは色が派手なものとは限らない。(コレラタケの仲間、ヒメアジロガサ)
「縦に割けるキノコは食べられる」「毒キノコは色が派手で地味な色で匂いの良いキノコは食べられる」「銀のスプーンが変色しなければ食べられる」「虫が食べているキノコは人間も食べられる」「ナスと一緒に食べれば中毒しない」といった見分け方は何の根拠もない迷信であり、絶対にそれらの基準で判断してはいけない。事実、猛毒であるコレラタケ、ドクササコなどは縦に割け地味な色である。
これらのよく知られた俗説が全国区の権威あるものとして広まった背景としては、明治初期の官報に、一部で流布していた俗説を事実であると誤認し、掲載してしまったためであると言われている。
食用か毒かを判断するには、そのキノコの種、さらにはどの地域個体群に属するかまでの同定結果に基づくべきである。また、実際に起きているキノコによる中毒の多くは、既に毒であることが知られたキノコによるものであることをわきまえる必要があろう。キノコ中毒を未然に防止するためには公の機関によるさらなる啓蒙が必要である。
出典:ウィキペディア