1、 鳥の巣とは
ほとんどすべての鳥は、巣に卵を産んで繁殖します。巣は卵を孵して、ヒナを育てる場である以前に、求愛のための場である事もあります。眠る場所(ねぐら)としてつくられる鳥の巣もありますが、日本産の大部分の鳥にとって、巣とは繁殖のための場所です。
ここでは、鳥の巣の形、巣材、巣場所をいくつかのタイプに分けて解説します。また巣づくりや古巣利用などについても説明します。
2、 巣の構造
鳥の巣全体の形をつくっている部分を外巣といいます。これに対して、卵が乗る部分を産座と呼びます。産座はしばしば外巣に対して内巣とも呼ばれます。外巣と産座(内巣)の二重構造を区別できない場合もあり、その場合は、普通は産座がないといういい方をします。この他に、樹の枝などに取り付けるための構造や、外巣の外側に地衣類などによる装飾部分を区別できる場合もあります。
3、 巣の形
巣の形は、次の7タイプに分けることができます(図を参照のこと)。
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窪み:地上や岩崖に見られます。ほとんど、あるいはまったく巣材はなく、せいぜい少し地面に窪みがあるだけという場合も少なくありません。
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皿形:浅い産座があり、屋根はありません。産座が深くなるとお椀形になります。
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お椀形:皿形との違いは、産座が深めという点です。
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ボール形 産座は深く、縁から連続した屋根があり、普通横に入口の穴があります。深いお椀形が横を向いた場合もボール形に見えることがあります。
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トックリ形:ボール形の入口が細く伸びた形です。
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穴:地面や土崖など無機物の穴と、樹など植物質の穴に大別できます。
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マウンド:植物遺体を集めて積み上げその中に卵を埋め込みます。これはキジ目のツカツクリ類だけにみられます。
4、
巣材
巣材は、大まかに無機物、動物質、植物質に分ける事ができます。
無機物には、小石と泥が含まれます。小石はごくまれにしか使われませんし、泥を使う鳥も約5%しかおらず、いずれも巣材としては少数派です。
動物質としてよく使われるのは、羽毛、獣毛、鱗翅類幼虫の糸、クモの糸です。またアマツバメ科でのみ、自分自身の唾液を使っての巣づくりが知られています。
植物質は、もっともよく使われる巣材です。枯葉、枯草、枝、樹皮、根、綿、シュロの毛など、植物体のほとんどあらゆる部分が巣材に利用されます。また、コケや地衣類、シダ、海藻、菌糸束までもが巣材に利用されます。
外巣と産座ではふつう異なる巣材が用いられるなど、一つの巣でもさまざまな巣材が使われます。また地域によって、あるいは巣によっても巣材は違っています。
5、
巣場所
巣場所は、次の9タイプに分けることができます(図を参照のこと)。
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地中:地面に穴を掘る場合と、土崖に横穴を掘る場合があります。
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地上:地面にそのまま産卵してしまう場合と、地面に巣をつくる場合があります。
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草上:草やササの上に巣をのせます。
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樹上:巣を枝に付ける場合の他に、葉や幹に付ける場合もあります。枝に付ける場合は、枝のまたにのせる、横枝の上にのせる、枝先からぶら下げるなどのタイプを区別できます。
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樹洞:自分で穴を掘って営巣する種(一次樹洞営巣種)と、自然樹洞やすき間、あるいは他の鳥が掘った穴を利用する種(二次樹洞営巣種)がいます。
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すき間:岩壁、石、人工建造物などのすき間を利用します。
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棚:岩棚や土崖の棚に巣をのせる場合です。
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壁:壁に巣を取り付ける場合です。日本では、ツバメ類とヒメアマツバメ。
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水上:水に浮かべる巣の事です。日本では、カイツブリ類。
6、
巣の見つけ方
巣を探すには、まず鳥の行動をよく観察する必要があります。鳥の巣を収集する目的がなくても、巣を探すのは鳥の生態をよく知るのにとても役立つでしょう。しかし、繁殖中の巣を探すときは、鳥の繁殖に悪影響を与えないよう充分注意する必要があります。
繁殖期の巣を探すには、まず巣材や餌を巣へ運ぶ親鳥を見つけて、後をついていきます。ただし、巣をつくっている途中はちょっとした事で巣を放棄しやすいので、巣に近づきすぎないように細心の注意が必要です。どういった場所に巣があるかをよく知っていたら、その鳥が生息している地域で、巣のありそうな場所をチェックするだけで巣を見つける事ができます。
繁殖が終わった巣を探す場合は、繁殖に悪影響を与える心配がないので安心です。しかし鳥が巣に出入りしないので、どんな所に巣があるのかの知識がないと巣を見つけるのは大変です。初心者には、樹の葉の落ちた冬に、樹の上に塊状の物(枯れ枝、葉、コケなど)がないかを探すのがお薦めです。
出典:ウィキペディア